TECHNICAL NOTE / SEISMIC DESIGN

上下水道施設における
L1・L2 耐震解析の違い

L1 と L2 の差は地震動の大小だけではない。要求性能・許容損傷・解析精度・説明責任の深さが異なる。案件に対して過不足ない照査レベルを選ぶことが、コスト・工期・品質を同時に守る最初の技術判断となる。

L1地震動 L2地震動 耐震性能 水道施設 照査レベル
本ページの位置づけ:
水道施設の耐震設計において、L1/L2 を「地震動の大きさの違い」として捉えるだけでは実務に耐えない。本ページでは、目標性能・解析モデルの要求水準・説明責任の観点から、両者の本質的な差異を整理します。

1. L1・L2 の基本的な位置づけ

水道分野の耐震化指針では、レベル1地震動は供用期間中に比較的発生可能性が高い地震動、レベル2地震動は当該地点で想定される最大規模の強さを有する地震動として整理される。重要なのは、これが入力条件の定義であると同時に、施設に求める性能区分の入口でもあることだ。

上下水道施設では、同じ RC 構造物でも施設の重要度・停止した場合の社会影響・二次災害性・代替性の有無によって、どの性能水準まで確認すべきかが変わる。したがって、L1/L2 の選択は解析担当者の好みではなく、施設の役割と要求性能から逆算して決めるべきである。

2. 何が違うのか

比較項目 L1(レベル1地震動) L2(レベル2地震動)
目標性能 機能継続・損傷抑制 致命的破壊の回避・重要機能の保持
許容損傷 ひび割れ等を一定範囲内に抑制 部材降伏・塑性化を条件付き許容
解析モデル精度 応答変位法・静的解析で整理しやすい 地盤連成・動水圧・液状化等の論点を先に洗う必要あり
説明の仕方 所定照査の積み上げ モデル選定理由まで要求される

目標性能が違う

L1 では、ひび割れや局所損傷を一定範囲内に抑えつつ、機能継続や早期復旧可能性を重視する。L2 では、部材降伏や塑性化を許容する場面があっても、全体系として崩壊しないこと、重要機能を致命的に失わないことが主眼になる。

解析モデルに求める忠実度が違う

L1 では、設計条件が明確で構造が整形なら、応答変位法や静的解析による合理的整理が成立しやすい。L2 では、地盤との相互作用・開口・中壁・ブロック割・液状化・上下動・動水圧など、静的置換で落ちやすい論点を先に洗う必要がある。

説明の仕方が違う

L1 は「設計条件に対して所定の照査を通しているか」を積み上げる説明になりやすい。L2 は「なぜこのモデルで最大級地震時の挙動を説明できるのか」というモデル選定の説明まで要求される。

3. どちらを選ぶべきか

L1 を主軸にしやすい場面

既設更新の初期検討 / 整形な RC 水槽・配水池・ポンプ場躯体 / 耐震性の有無を把握したい段階 / 局部照査・断面整理を外注委託したい段階

L2 を視野に入れるべき場面

重要施設で停止影響が大きい / 地下構造物・複合施設で地盤連成が支配的 / 上部建屋と地下水槽が一体 / ブロック分割・複雑な耐震壁配置など 2 次元化で本質を落としやすい

4. 実務で見落としやすい判断点

重要度区分を先に決めない

水道の耐震化計画等策定指針でも、施設の重要度と水供給への影響整理が先行する。ここが曖昧なまま L1/L2 の議論に入ると、解析が過大にも過小にもなりやすい。

L2 なのに設計条件が L1 のまま

地震動だけ L2 に上げ、地盤条件・浮上り検討・水位条件・境界拘束・連結部条件が L1 相当のまま据え置かれるケースは危険だ。L2 は入力波の差だけでなく、条件の洗い直しが必要になる。

結果の数字だけで安全を言う

L2 の照査では、最大応答値だけでは不十分なことがある。損傷の集中位置・塑性化の順序・機能喪失モード・復旧性まで見ないと、説明が途中で切れる。

5. LANDPLUS の実務整理

LANDPLUS では、L1/L2 の判断を以下の順で行うと整理しやすい。

  • 施設の機能停止影響を整理する
  • 既設か新設か、更新か、補強かを整理する
  • 地盤条件と構造形式の複雑さを整理する
  • 静的整理で説明可能か、動的解析が必要かを切り分ける
  • 最終的に、発注者説明に必要な粒度まで成果物を設計する

つまり、L1/L2 は「解析メニュー」ではなく、「説明責任の階層」である。

6. よくある誤り

  • L2 の方が高度だからと、案件初期から全件に当てようとする
  • 2 次元モデルの前提条件を確認せず、立体効果が大きい配水池にも同じ整理を当てる
  • 重要施設なのに、供用継続性や二次災害性の議論が抜ける
  • 水圧・土圧・地下水圧・上部反力の組み合わせを L1/L2 で切り替えず流用する
※ 本ページは技術説明を目的として再構成したものです。実施設計では、対象施設の重要度・地盤条件・適用指針・荷重組み合わせ・照査方針を個別に検討し、担当技術者による最終判断が必要です。
参考資料:国土交通省・旧厚生労働省「水道の耐震化計画等策定指針」(2015)/国土交通省「上下水道地震対策検討委員会報告書」(2024)/国土交通省「下水道施設の耐震対策指針と解説-2025年版-改定通知」(2025)
※ 本ページは上記資料をもとに技術説明用に再構成したものです。