CASE STUDY / DISTRIBUTION RESERVOIR L2 DYNAMIC ANALYSIS

解析事例:浄水場 配水池のL2耐震解析(動的解析)

地盤-構造物連成の2次元動的解析に3次元効果を取り込み、照査から数量・概算工事費まで一貫対応した実例

浄水場内の配水池(2池構造)を対象に、常時・レベル1地震動は静的解析、レベル2地震動は動的解析により耐震性能を照査した解析事例です。SHAKEによる地盤応答解析と入力地震動3波の選定、平面ひずみ要素+梁要素による地盤-構造物連成モデル、妻壁・隔壁の変形拘束効果(3次元効果)の等価剛性化、限界状態設計法による部材照査、補強数量・概算工事費のとりまとめまで、実際の検討フローに沿ってご紹介します。

配水池(2断面) L2動的解析 SHAKE地盤応答 入力地震動3波 M-φ非線形 数量・概算工事費
41.7m×34.0m
配水池の平面規模
(2池構造・A-A/B-B 2断面)
3波
L2入力地震動
(短周期・長周期・地盤固有周期)
M-φ非線形
RC部材の非線形性を考慮した
地盤-構造物連成動的解析
報告書まで
照査・補強・数量計算書
概算工事費・施工計画書に対応
本事例の位置づけ:
本ページは、当社が実施した浄水場・配水池の耐震解析業務の検討内容を、守秘義務に配慮して施設名等を伏せて掲載した解析事例です。掲載している図面・解析図はすべて本検討の実物です。池状構造物の耐震解析の技術的な考え方は、技術資料「浄水場のL2耐震解析」「上水道 PC造池状構造物の耐震解析」も併せてご参照ください。

1. 検討対象と業務範囲

対象は浄水場内の配水池です。平面規模41.7m×34.0mの2池構造で、池内には柱・導流壁・隔壁が配置され、頂版上面を地表面付近とする半地下式の鉄筋コンクリート構造です。常時・レベル1地震動に対しては静的解析、レベル2地震動に対しては動的解析(3次元効果を見込んだ2次元解析)により、A-A・B-B の代表2断面を対象に耐震性能を照査しました。

項目 内容
対象施設 浄水場内 配水池(2池構造・半地下式RC造)
平面規模 41.7m×34.0m(A-A断面 幅約40.6m/B-B断面 幅約32.9m)
水位条件 HWL +136.0/LWL +132.5(有効水深3.5m)
解析レベル 常時・L1:静的解析(許容応力度法)/L2:動的解析(限界状態設計法 γi·Sd/Rd≦1.0)
対象断面 A-A断面・B-B断面の代表2断面(静的解析は全断面)
業務範囲 地盤応答解析/入力地震動選定/動的解析・部材照査/補強設計/数量計算書・概算工事費・施工計画書・報告書
配水池 平面図
図-1 配水池 平面図(41.7m×34.0m・2池構造、柱・導流壁の配置)
A-A断面図
図-2 A-A断面図(幅約40.6m・HWL+136.0)
B-B断面図
図-3 B-B断面図(幅約32.9m・導流壁を含む)

2. 荷重条件の整理

池状構造物の照査では、常時(躯体自重・上載荷重・土圧・地下水圧・浮力・内水圧)と地震時(慣性力・地震時土圧・地震時動水圧・地盤ばね)の荷重を整理し、水位条件(満水・空水)との組み合わせを設定します。本検討で整理した荷重モデルを下図に示します。

常時荷重図・地震時荷重図

3. 入力地震動の選定:応答スペクトルによる3波選定

L2地震動の動的解析では、基準の考え方に基づき3波形以上を選定して入力地震動とします。本検討では、工学的基盤(Vs=630m/s)に候補波形を入力してSHAKEによる1次元地盤応答解析を行い、地表面の速度応答スペクトル(h=0.05)を比較しました。その結果、短周期帯域が卓越する波形・長周期帯域が卓越する波形・地震時地盤固有周期付近が卓越する波形の3波を選定し、動的解析の入力地震動としました。

速度応答スペクトルの比較
図-5 候補波形の速度応答スペクトル比較(卓越周期帯域による選定)
入力地震動の加速度波形
図-6 選定した入力地震動の加速度時刻歴波形(例)
選定のポイント:
応答スペクトルの「どの周期帯域で大きいか」は波形ごとに異なります。短周期卓越波・長周期卓越波・地盤固有周期付近卓越波をそれぞれ採用することで、構造物の応答に対して厳しい側の地震動を取りこぼさない選定としています。

4. 動的解析モデル:地盤-構造物連成+3次元効果の考慮

動的解析モデルは、地盤を平面ひずみ要素、躯体を梁要素でモデル化し、地盤と構造物はジョイント要素で接合しました。モデル底面は粘性境界、側方は粘性境界を介して自由地盤に接続し、地震動は工学的基盤面(Vs=630m/s層)から入力しています。RC部材にはM-φの非線形特性(ひび割れ・降伏・終局)を設定し、部材ごとの塑性化の程度を直接評価できるモデルとしました。

RC部材のM-φ非線形特性
図-7 RC部材のM-φ非線形特性の設定(隔壁・柱・側壁・頂版・底版)

妻壁・隔壁による変形拘束効果(3次元効果)の取り込み

対象の配水池は、解析断面に直交する妻壁・隔壁を有しており、これらが地震時の変形を拘束します。2次元解析でこの効果を無視すると過大な変形・断面力を与えるため、本検討では別途構築した3次元FEMモデルとの変形比較により、2次元モデルに配置する平面要素の剛性を設定しました。

  • 壁部材を3次元板要素でモデル化したFEMモデルに線荷重を加え、最大水平変位 δ1 を算出
  • 面内部材を梁要素+面外壁を平面要素とした2次元モデルに同じ荷重を加え、水平変位 δ2 を算出
  • δ1≒δ2 となるよう平面要素の剛性を調整(本検討では 2次元 0.00393m ≒ 3次元 0.00387m を確認)
  • 平面要素を設けない場合の変形は約0.064mとなり、3次元効果を無視すると変形を20倍近く過大評価することを確認

5. 解析結果と部材照査

選定した3波それぞれについて時刻歴応答解析を行い、各部材の曲げモーメント・軸力・せん断力の最大・最小応答値を抽出して、限界状態設計法により照査(γi·Sd/Rd≦1.0)しました。地盤の相対変位分布から、構造物に作用する地盤変形の影響も併せて確認しています。

地盤相対変位図(連成モデル全体)
図-8 地盤相対変位図(地盤-構造物連成モデル全体・自由地盤接続)
曲げモーメント図
図-9 曲げモーメント図(L2時刻歴応答の最大値分布)

照査結果は、部材・着目位置ごとに曲げ耐力・せん断耐力・引張耐力のOK/NGを断面図上に総括し、どの部材のどの位置が、どの照査項目で不足するのかを一目で確認できる形に整理しました。この総括図が、そのまま補強設計の対象箇所図になります。

耐力照査結果の総括図
図-10 耐力照査結果の総括図(部材・位置ごとのOK/NG一覧、NG箇所を赤表示)

6. 補強設計から数量・概算工事費まで

照査で特定したNG箇所に対して補強設計(あと施工アンカーによるせん断補強等)を行い、数量計算書・概算工事費・施工計画書・報告書まで一式を取りまとめました。解析だけで終わらせず、発注者協議・次フェーズの実施設計にそのまま使える成果物とすることを重視しています。

数量計算書(あと施工アンカー)
図-11 数量計算書(あと施工アンカー:削孔・アンカー本数・注入量・足場)
概算工事費内訳書
図-12 概算工事費内訳書(工種別内訳)
本事例の納品成果物

耐震解析報告書(条件整理・地盤応答・動的解析・照査総括)/計算書(照査式・数値根拠を明示)/補強設計図・数量計算書/概算工事費/施工計画書

対応エリア

資料の電子授受とWeb打合せにより全国対応。東北(仙台市)・関西(大阪市)・九州(福岡市)など、関東圏以外の案件も同じ進め方で対応可能です。

適用基準・参考資料:
水道施設耐震工法指針・解説(日本水道協会 2022年版)/水道施設設計指針(日本水道協会)/土木構造物の耐震設計入門(土木学会)
※ 掲載図はすべて当社実施業務の成果の一部であり、守秘義務に配慮して施設名・位置情報等を伏せています。
【実務上の注意事項】
池状構造物の耐震照査結果は、地盤条件、入力地震動の選定、3次元効果のモデル化方法、水位ケースの設定等により大きく変わります。本事例の解析方法・結果は当該施設の条件に基づくものであり、そのまま他施設に適用できるものではありません。個別の施設条件に基づく検討が必要です。
浄水場・配水池の耐震解析のご相談

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