CASE STUDY / SEWAGE TREATMENT SEISMIC RETROFIT

建築・土木複合構造物(Ⅳ類)の 耐震診断・耐震補強設計

終末処理場の水処理施設(最初沈殿池・反応タンク・最終沈殿池)を対象に、現地劣化調査から レベル1/レベル2地震動に対する躯体・基礎・伸縮継手の照査、補強工法の選定・設計、 概算工事費の算定までを一貫してご提供した実務事例です。新基準(平成10年改定)以前に 設計・供用された既設施設の現行耐震基準への適合性診断と耐震化対策の提案を目的としています。

複合構造物 Ⅳ類 耐震診断 L1 / L2 照査 RC増打ち 後施工SH 概算工事費
対象構造物
最初沈殿池/反応タンク/最終沈殿池
地上3階・地下1階 鉄筋コンクリート造(杭基礎)
構造分類
複合構造物 Ⅳ-1類
上部=建築診断/下部躯体=土木診断の複合躯体
照査地震動
レベル1 / レベル2
許容応力度法+限界状態設計法による2段階照査
本事例の位置づけ:
守秘義務に配慮し、発注者名・施設固有名称を伏せて掲載しています。記載の方法・フロー・照査項目・補強工法は いずれも当社の実成果に基づくものです。供用開始から十数年が経過し、耐震基準改定前に設計された処理施設を対象とした 「現行耐震基準への適合性診断」と「耐震化対策の提案」の事例です。

業務全体の作業フロー

既設構造物の現況把握から耐震性能の定量評価、対策提案までを5ステップで進めます。各ステップの成果を次工程の 入力条件として連動させ、診断から補強設計・積算までを途切れなく一貫対応します。

STEP工程内容
STEP 1現地劣化調査ひび割れ・鉄筋露出・漏水等の目視調査と、耐震上考慮すべき損傷の抽出
STEP 2条件整理・モデル化想定地震動・性能目標の設定、躯体/基礎/複合区分の分類
STEP 3耐震診断(照査)L1/L2に対する曲げ・せん断・基礎・伸縮継手の照査と破壊モード判定
STEP 4補強・補修設計工法比較選定、部材ごとの補強量算定、ひび割れ・断面修復計画
STEP 5概算工事費・報告補強範囲図・数量・概算工事費の取りまとめと報告書作成

1. 検討対象と業務範囲

供用開始から十数年が経過し、耐震基準改定前に設計された処理施設を対象とします。経年変化と基準改定の双方を踏まえ、 現況の劣化度を把握したうえで、現行耐震基準に対してどの程度の耐震性能を有するかを判断し、必要に応じて耐震化対策を提案します。

対象構造物規模構造種別基礎構造構造分類
最初沈殿池地上3階・地下1階鉄筋コンクリート造杭基礎(鋼管杭 φ800 t=9)Ⅳ-1類
反応タンク地上3階・地下1階鉄筋コンクリート造杭基礎(鋼管杭 φ800 t=12)Ⅳ-1類
最終沈殿池地上3階・地下1階鉄筋コンクリート造杭基礎(鋼管杭 φ800 t=9)Ⅳ-1類
施設一般図(平面図・立体図)
図-1 水処理施設の平面図・X方向/Y方向断面図

業務範囲

  • 現地調査:構造物の劣化度把握(ひび割れ・浮き・剥落・鉄筋露出・漏水・目地異常)
  • 耐震診断:土木構造物(躯体・基礎)および伸縮継手の耐震性能評価
  • 耐震補強検討:補強工法の選定・比較、部材ごとの補強量算定、補強範囲図作成
  • 補修検討:ひび割れ補修・断面修復工法の選定
  • 概算工事費:補強・補修に係る数量・直接工事費の算定
  • 報告書作成:本編・概要版・耐震診断結果一覧の取りまとめ

2. 耐震診断の基本事項(想定地震動・性能目標)

処理場は下水道システムの根幹をなす重要施設に位置づけられます。震災後も機能を維持し人命の安全を確保するため、 2段階の想定地震動に対して、それぞれ異なる耐震性能目標を設定して診断を行います。

地震動区分地震動の内容耐震性能目標
レベル1供用期間内に1〜2度発生する確率を有する地震動地震動の作用を受けても、処理場本来の機能を確保する。
レベル2供用期間内に発生する確率は低いが大きな強度を有する地震動構造物が損傷・塑性変形しても、比較的早期に機能を回復できる性能を確保する。

判定条件(土木構造物 躯体)

修正した計算条件のもとで、レベル1・レベル2の各地震動に対し、以下の照査比がいずれも 1.0 を上回れば要求耐力を満足と判定します。

レベル1地震動(許容応力度法)

Mca / Mc … コンクリート 許容/発生 曲げ圧縮応力度
τa / τ … コンクリート 許容/発生 せん断応力度
σsa / σs … 鉄筋 許容/発生 引張応力度

レベル2地震動(限界状態設計法)

Mud / γi·Md … 設計曲げ耐力/設計曲げモーメント
Vyd / γi·Vd … 設計せん断耐力/設計せん断力
γi·Vmu / Vyd … 破壊モード(曲げ先行/せん断先行)の判定

3. 診断方法(躯体・基礎・複合構造物)

土木構造物(躯体)

地中梁・大梁・柱・地下壁・耐圧版・杭体・杭頭を対象に、剛床解除や片持ち梁検討等の実状況を反映。 L1は許容応力度、L2は曲げ耐力・せん断耐力・破壊モードで照査します。

土木構造物(基礎)

『下水道施設耐震計算例』に準拠。直接基礎は①支持力②転倒・滑動③沈下量をL1で照査。 杭基礎はL1=許容応力度法、L2=限界状態設計法で照査します。

建築構造物(躯体)

中地震動(C0=0.2)で許容応力度設計、大地震動(C0=1.0)で層間変形角・剛性率・偏心率を確認。 重要度係数を考慮した耐震安全性を確保します。

複合構造物(Ⅳ類)

土木と建築の区分に従って診断。1階床より下部を土木診断、1階から上部を建築診断とし、 診断区分の境界を明確にして整合を図ります。

技術的なポイント — 土木/建築の診断区分の整合:
Ⅳ類の複合構造物では、1階床を境に下部を土木耐震診断、上部を建築耐震診断として扱います。境界部では、 土木側の大梁・柱の応力解析結果と、建築側の保有水平耐力評価を連携させ、診断区分の境界条件(剛床解除・ 片持ち梁・杭頭曲げ戻し等)を実構造に合わせて設定することが、複合躯体を正しく評価する鍵となります。
土木と建築の診断区分境界図
図-2 1階床を境とした土木/建築の診断区分
骨組解析モデル図
図-3 大梁・柱の応力解析/保有水平耐力モデル

4. 耐震性能評価(診断結果・伸縮継手)

部材ごと(大梁・地中梁・柱・地下壁・耐圧版・杭体・杭頭)にL1・L2の曲げ/せん断を照査し、OK/NG(要補強)を判定。 NG箇所は破壊モード(せん断先行)を改善する補強につなげます。

主な照査部材曲げ(L1/L2)せん断(L1/L2)診断上の主な配慮事項
大梁・柱一部 NG一部 NG剛床解除での検討、杭頭曲げ戻し・杭頭応力・杭頭耐力の最小値を考慮
地下壁OK一部 NG一部上部床なし。片持ち梁として検討
地中梁・耐圧版OK一部 NG主部材2方向照査、浮力・杭反力を考慮
杭体・杭頭OKOK杭頭処理の検討を考慮(鋼管厚の仕様差を反映)
耐震診断結果一覧(部材別 曲げ・せん断 判定)
図-4 部材別・地震動レベル別の判定一覧(NG箇所を赤表示)

伸縮継手(止水板)の耐震性能評価

各施設間の相対変形量を、基礎杭の弾性たわみ量と施設各層の変形量の総和から算定し、止水板の許容変位量 (伸び量・縮み量とも 30mm 想定)以内であるかを照査します。

  • 構造物の変形量 = 各層変形量の総和、基礎杭の変形量 = 水平力による弾性たわみ量で算出
  • 止水板はセンターバルブ型を想定、縮み率は構造物の実測目地幅で評価
  • 判定結果:L1・L2いずれの変形量も許容変位量以内 → 耐震性能を満足
伸縮継手の相対変位 評価モデルと判定表
図-5 管廊〜各池間の相対変形と止水板許容変位の関係

5. 耐震補強工法の選定と設計

一般的な5工法を、補強対象部材・効果(曲げ/せん断耐力向上)・施工性・経済性・水槽容量への影響の観点で比較し、 施工箇所の環境(腐食性等)に応じて最適工法を選定します。

補強工法主な効果対象部材本事例での採否・採用方針
1. RC増打ち工法曲げ・せん断耐力向上柱・梁・底版・壁採用 最も廉価で補強の基本。大梁・管廊地下壁・地中梁に適用
2. 鋼板補強工法せん断耐力向上柱・梁・底版・壁不採用(作業性・腐食環境で不利)
3. 炭素繊維シート接着せん断耐力向上柱・梁不採用(面取り作業多く施工的に不利)
4. アラミド繊維シート接着せん断耐力向上柱・梁水槽内など断面減を避けたい箇所の候補
5. 後施工プレート定着型 せん断補強鉄筋(SH)せん断耐力向上柱・梁・底版・壁採用 容量減がほぼ無く水槽内壁・地下壁・地中梁に適用
耐震補強工法 比較概要図
図-6 5工法の概要図・補強要領・適用部材の比較

採用工法ごとの補強方法

RC増打ち工法

大梁下部/地中梁上部への増打ちでせん断耐力を向上。地下壁は側面増打ちで曲げ・せん断耐力を向上し、 曲げ補強は圧縮側に増打ち。水平梁を設けて下部発生応力を低減する手法も併用します。

後施工プレート定着型せん断補強鉄筋(SH)

地下壁・地中梁(耐圧版)に鉄筋を後施工挿入してせん断耐力を向上。鉄筋量が多い地中梁では、 有効幅分の耐圧版に補強鉄筋を挿入して破壊モードを改善します。

RC増打ち補強 概念図
図-7 大梁・地下壁へのRC増打ち補強要領
後施工プレート定着型せん断補強鉄筋 概念図
図-8 地下壁・地中梁への後施工プレート定着型補強

補修工法・劣化対策

  • ひび割れ補修:低圧低速注入工法(注入圧0.4MPa以下)。湿潤面接着性に優れるポリマーセメント系材料を選定
  • 断面修復:鉄筋露出・発錆部をはつり、防錆処理・プライマー塗布後にポリマーセメントモルタルを充填
  • 概算工事費:補強範囲図・数量を整理し、仮設工事・躯体工事に区分して直接工事費を積算

6. 納品成果物と対応エリア

本事例の納品成果物

耐震診断報告書(本編・土木/建築)、報告書 概要版、耐震診断結果一覧表、耐震補強範囲図、 概算工事費(数量計算書)を納品。診断・補強・補修を一貫して取りまとめます。

対応エリア

資料の電子授受とWeb打合せにより全国対応。東北(仙台市)・関西(大阪市)・九州(福岡市)など、 関東圏以外の案件も同じ進め方で対応可能です。

適用基準・参考資料:
下水道施設の耐震対策指針/下水道施設耐震計算例(L1:許容応力度法、L2:限界状態設計法)。建築は許容応力度設計+保有水平耐力。
※ 掲載図はすべて当社実施業務の成果の一部であり、守秘義務に配慮して施設名・位置情報等を伏せています。
【実務上の注意事項】
複合構造物(Ⅳ類)の耐震診断・補強設計の結果は、地盤条件、入力地震動の選定、躯体のモデル化方法、 荷重組合せ・照査方針等により大きく変わります。本事例の解析方法・結果は当該施設の条件に基づくものであり、 そのまま他施設に適用できるものではありません。個別の施設条件に基づく検討と技術者による照査が必要です。
既設処理施設の耐震診断・補強設計のご相談

「新基準前の施設で耐震性能が不明」「補強範囲と概算費用を知りたい」——診断から対策提案まで一貫対応します。既存資料の確認段階からお気軽にご相談ください。

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