TECHNICAL NOTE / L2 SEISMIC ANALYSIS WORKFLOW

上下水道施設の
L2 耐震解析 実務フロー

設計条件整理 → 解析モデル構築 → 動的解析実施 → 部材照査 → 報告書作成。この流れを正しく設計することが、解析精度と説明責任の両方を担保する。2022 年版水道施設耐震工法指針改訂を踏まえ、実務担当者が全体像を把握できるよう整理した。

L2動的解析 実務フロー 設計条件整理 解析モデル 部材照査 水道施設
2022 年版指針改訂のポイント:
「水道施設耐震工法指針・解説 2022 年版」(公益社団法人日本水道協会)では、動的解析(非線形)を原則とし、施設規模等に応じた合理的な解析手法の選定が求められるようになった。静的線形解析で整理できるのは「地盤が安定」「構造が単純」「施設規模が小さい」条件が揃う場合のみで、それ以外は静的非線形解析または動的非線形解析が必要になる。

1. 解析手法の選定マトリクス

まず「どのレベルの解析を選ぶか」を決めることが、フロー全体の方向性を決める。施設の重要度・構造形式・地盤条件を照合して以下から選定する。

Basic — 静的線形解析
応答変位法・静的 FEM

整形構造・小規模施設・地盤安定。設計条件が明確で説明しやすい。

適用条件:地盤安定 / 構造単純 / 施設規模小
Mid — 静的非線形解析
プッシュオーバー解析等

中規模・複雑な耐震壁配置。靭性評価が必要な場合に採用する。

適用条件:条件付き複雑構造 / 変形性能評価が必要
Adv — 動的非線形解析
時刻歴動的解析

大規模・重要施設・液状化地盤・複合施設。2022 年版指針の原則手法。

適用条件:重要施設 / 地盤非線形 / 液状化リスクあり

2. 実務フロー(7 ステップ)

01

施設重要度・要求性能の確認

対象施設の重要度区分・機能継続水準・L1/L2 の適用範囲を明確にする。重要給水施設への供給影響・二次災害性・代替性の有無を整理し、照査レベルを決定する。

重要度区分表 / 要求性能整理シート
02

設計条件の整理

対象地震動(L2 設計地震動の出典・スペクトル特性)、地盤条件(地盤調査資料・液状化評価)、水位条件(空水・運転水位・満水)、材料条件、適用規準(水道施設耐震工法指針等)を確定させる。未確定条件は未確定と明記する。

設計条件整理書 / 荷重条件一覧
03

地盤応答解析

工学的基盤面における地震動を入力とし、浅部地盤の一次元動的非線形解析を実施する。地盤物性の非線形性・液状化の影響を適切に考慮し、構造物への入力地震動(地表面応答加速度・深さ方向変位分布)を求める。

地盤応答解析報告 / 入力地震動時刻歴
04

解析モデルの構築

2D か 3D かの判断、地盤ばね定数の設定、接触面条件、水の扱い(付加質量 or 動水圧評価)、材料モデル(線形 / 弾塑性)を決定する。モデル化の前提と単純化の根拠を文書化する。配水池・水槽では中壁・ブロック割・開口条件を必ず確認する。

モデル条件書 / 地盤ばね一覧 / 入力一覧
05

動的解析の実施

設定した荷重ケース(L1 / L2・空水 / 満水・上下動の有無等)を一覧化してから解析を実施する。複数波での評価、代表ケースの選定方針を先に定める。解析結果は変形モード・応力集中部・損傷モードの観点から妥当性確認を行う。

荷重ケース一覧 / 解析結果一覧(変位・断面力)
06

断面力整理・部材照査

支配ケースを断面力種別(曲げ・せん断・軸力)ごとに選定する。評価断面は壁中央のみならず、壁床版接合部・開口端・隅角部・剛性変化部を必ず含める。符号規約を計算書冒頭に明記し、照査式の適用条件を部材区分ごとに確認する。

断面力一覧 / 支配ケース表 / 照査表 / NG箇所一覧
07

報告書の作成・発注者説明

NG 箇所一覧だけでは不十分。なぜその部位が弱点か・損傷がどの機能に効くか・補強要否の判断根拠まで示す。解析の前提条件・単純化の根拠・結果の限界も明記し、後工程で設計変更が生じても根拠が追えるようにする。

解析報告書 / 発注者説明資料 / 補強要否判定表

3. 要求性能と照査の対応関係

2022 年版指針では、要求性能→限界状態→照査指標→許容限界の対応を階層化して整理することが求められている。以下はその基本構造である。

要求性能
機能継続性能
修復性能
安全性能
限界状態
機能限界
修復限界
終局限界
照査指標
ひずみ・変位・
曲率・応力
許容限界
指針・設計者が
設定する値

4. フローで事故が起きやすいポイント

ステップよくある失敗防止策
設計条件整理 水位条件・地盤条件が暫定のまま解析着手 未確定条件を明記し、後で変わった場合の再計算範囲を先に合意する
地盤応答解析 自由地盤の変位分布を構造解析に機械的に渡す 地盤ばね定数は構造物の変位パターンに応じて変わることを認識する
解析モデル構築 2D モデルの前提を説明せず、立体効果が大きい施設に適用する 2D 化の前提を文書化し、3D 化が必要な条件を事前に判断する
動的解析実施 1 水位・1 方向で終え、水位変動・上下動を落とす 荷重ケース一覧を先に作り、全ケースを解析前に確認する
断面力整理 支配ケースを混同し、曲げ・せん断で別ケースを流用する 照査種別ごとの支配ケース番号を一覧に残す
報告書作成 NG 値の羅列のみで、補強要否判断の根拠がない 損傷が機能に効くかどうかの判断と補強要否を必ず記述する

5. 成果物の標準構成

段階成果物含めるべき内容
条件整理 設計条件整理書 地震動・地盤・水位・材料・適用規準・未確定条件の明記
モデル化 モデル条件書 モデル次元・材料則・接触条件・地盤ばね・2D 化根拠
解析 荷重ケース一覧・解析結果一覧 全ケース一覧・変位分布・断面力ピーク・妥当性確認メモ
照査 断面力一覧・照査表・NG 箇所一覧 支配ケース番号・符号規約・評価断面定義・NG 原因コメント
報告 解析報告書・発注者説明資料 弱点部位・機能への影響・補強要否判定・解析の限界の明記
※ 本ページは技術説明を目的として再構成したものです。実施設計では「水道施設耐震工法指針・解説 2022 年版」等の最新指針を直接参照し、対象施設の地盤条件・構造形式・重要度区分・荷重組み合わせを個別に検討したうえで、担当技術者による最終判断が必要です。
参考資料:公益社団法人日本水道協会「水道施設耐震工法指針・解説 2022 年版」/国土交通省「水道の耐震化計画等策定指針」(2015)/国土交通省「上下水道地震対策検討委員会報告書」(2024)/構造計画研究所「上下水道施設の耐震評価」(解析ポータル)
※ 本ページは上記資料をもとに技術説明用に再構成したものです。